都心のの一室。朝食の準備は、積み上げた新聞や資料の谷間にお盆を置くことから始める。16畳ほどのリビング兼書斎が、(87)の朝食の場所だ。あふれた皿は、本の上に載せることになる。やかんで紅を沸かしながら、目玉焼きを作り、冷凍しておいた食パン1枚をトースターに入れたら、レタスを手でちぎる。グラスを三つ並べて牛乳、リンゴジュース、冷たい茶を注ぐ。台所と書斎を往復しながらお盆にすべてのメニューがそろう頃、「チン」とトースターが鳴る。30年間ほぼ同じ。いつもの食器に、いつものメニュー。考えなくても体が動く。